ベッドの上で昔ばなしを

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ベッドの上で昔ばなしを

浜歩き大会から一晩経った、休日の午前中。 窓の外では灰色の猫が遊んでいて、屋根の上をうろうろしては時折顔を洗っている。その下の道路では子供達が「ごっこ遊び」をしてはしゃぐ声が聞こえる。外の陽気は穏やかで、レースのカーテン越しに射し込む光からもそれが感じられる。 そんな絶好のお出かけ日和に、昨日の疲れが取れない私達は、2段ベッドの上下に分かれて寝っ転がっていた。 昨日、山道と砂浜をランニングした疲れがドッと出てしまい、私もそうだけれど上段のレイネも元気が無い。普段はシャキッと縦にまっすぐな立ち姿の彼女も、今は背筋(せすじ)をベッドに横たえている。幸い、今日は部活も休みだ。 「昨日は色々あったねぇ……」 「ああ、そうだな……」 お互いの顔も見ないまま、上と下で横着した会話を始める私達。身体はだるくても眠気はそれ程無かったので、暇つぶしにおしゃべりくらいなら出来る。 「昨日のって何だったのかな……?」 そう、私にはどうしても聞いておきたい事があった。それは、スマホをいじるよりも優先順位の高い事だった。 「とは?」 彼女にはアレが通じていなかった。勘がニブイタイプでもないのに、ぼんやりとした反応だ。 「❝田中君と鈴木さんがおヘソを取られちゃった件について❞だけど……」 「やはりそうであったか。あまりすすんで話す物でもないが……、巻き込んでおいて話さぬのも礼を欠くな」
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