ベッドの上で昔ばなしを

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ため息を漏らしながら、彼女の重たい口が開かれようとしている。本当は昨日の内に聞いておきたかったのに、ご飯やお風呂のタイミングではぐらかされ、挙句の果てに「疲れた」と言ってベッドの上に逃げられてしまっていた。 事件は無事解決したので、彼女が言いたく無いのであれば無理矢理聞き出す必要は無い。でも、あれだけ大変な目に遭って、真相を聞かないままなんて私には出来なかった。 「わかった……。他の者に聞かれては不味い。詩乃、人払いを」 「誰もいないって」 お父さんとお兄ちゃんは朝早くから一緒に車で出掛けているし、お母さんもご近所に呼ばれて出て行ったから、今は私達しかいない。そもそも、人がいないかどうかなんて自分で確認すればいいのに、彼女の命令癖には困ったものだ。 「そうか。では心して聞くのだ……」 ようやく彼女の口から、あの一件の真相が語られる事となった。 「且つて、天と地との距離が近かった頃……、雷と人の交わりは今より深かった。我が同胞は地上に足繫く降り立ち、その類稀なる力に人は畏怖と尊敬の念を抱き、(あが)め奉った。その証拠に、今も我らを祀る寺社は津々浦々に存在する」 見た目に似合わず、村の生き字引みたいな語り口だった。そういえば彼女もカミナリ様で、ここからでは見えないが、今はツノを出してリラックスしているに違いない。 「ここまでは地上の記録にも残るありふれた伝説の域を出ないが、ここからは私の知っている事を話そう」
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