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「これは天界の記録になるが、我らが同胞は地上で神として崇められていた。彼らは堂々と往来に姿を現し、人々の悩み事を聞いたり見回りの手伝いをしたりと積極的に交流していたようだ」
「そうなの!?」
驚いた、今でこそ姿の見えない神様に手を合わせているものが、昔は直接ふれ合っていたなんて!
「ああ、彼らの休憩所として建てられた神社も少なくない。件の社もその一つだったと見て間違いないであろう。その土地を気に入り、半ば住み込んでいた者もいたと伝え聞くが、それも天地の関係が良好であったからこそだ。……すまぬ、本題に戻ろう」
それはそれで興味深い話だったけれど、彼女は私に気を遣って私が聞きたかった事の先に進もうとしてくれた。
「あの2人は……、罠に掛かったのだ」
「罠!?」
鈴木さんと田中君は、謎の罠に掛かっておヘソを取られてしまったらしい。でも、誰がどうして……?
「海辺の土地ではよく聞かれる事だが、豊かな漁場を狙って盗みを働く輩が数多出没していたと云う。海の家がある彼の地も古来より好漁場があった故、盗人には頭を悩ませていた事であろう。住民から相談を受けた雷は見回りに加わり、度々盗人を捕らえていたようだ。しかし、人の欲望は時に神をも凌駕する。引きも切らずに夜討ち朝駆けでは、さしもの雷も目が届かぬ」
「ひどい……」
海の家周辺も、昔は密漁者達によって漁場を荒らされて困っていたようだ。カミナリ様をてこずらせるなんて、昔の密漁者達は悪い意味でのガッツがあり過ぎる。
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