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「ヘソは水路に転がり、浄められながら本殿へと流れゆく。そうして盗人が動けなくなった所で、雷や土地の民は無駄な抵抗に遭う事無く悠々と彼らを捕縛出来た。何とも凄い事だ」
「そうだね……」
レイネは昔のカミナリ様が開発した密猟者用の仕掛けを語りつつ、その凄さに感じ入っていた。確かに、恐ろしい装置ではあるものの、自動で密猟者を捕まえられるのは凄いと思う。
ちなみに彼女曰く、仕掛けを動かす為のエネルギーは主にカミナリ様自身の活力で、定期的に宝珠やお札に力を込めていたんだって。彼女は「これが今で言う電池の始まりだ」と言っていたけれど、それはたぶんジョークだろうな。
「でもこれって……、おヘソを取る必要あるのかな?」
彼女の説明の中で、そこが引っ掛かっていた。安全に捕まえるだけなら電撃で気絶させるだけで充分だと思う。
「やはりそう思うか。だがそれも理に適った事。ヘソを取られた者は特有の脱力感が出て、上手く動けなくなる。気絶から目覚めるのが早く、捕縛する前に起き上がって逃げられたり暴れられたりしては面倒であろう? 無駄な抵抗をさせずに拘束する為の方策だ」
「へえ……」
❝無駄な抵抗をさせずに拘束する為の方策❞か、なるほどね……。あおむけで吐いた息はベッドの上段の底板に吸い込まれていった。
「……そんな疑いの念を背中に送るでない。後世の私とて、雷からすればあわよくばヘソをいただこうという目論見があった可能性を否定はせぬ」
「ちゃっかりしてるというか、ずる賢いような……」
彼女はカミナリ様サイドの意見を正直に白状してくれたが、果たして真実はどっちだろう?
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