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なんだか、とても血なまぐさいものが伝わってきた。確かに人間だって怖い所はあるから、カミナリ様ばかりを怖がるのは違う。
「すまぬ、また話が逸れてしまった……。聞かなかった事にしてくれ」
「いや、いいよ……」
彼女は気まずそうにこの話を打ち切ろうとした。たぶん、人間を悪く言うつもりは無くて、本当は「雷は雷なりの考えで最善を尽くしていた」と私に伝えたかったんだと思う。
「しかし、そなたが我らを恐れるのも無理は無い。現にあの2人のヘソは、もう少しで危うく天界に運ばれる所だったのだからな」
なおも彼女が吐き出した言葉が、ドライアイスの煙のように重く冷たく私の身体に降りかかった。この嫌な空気、なぐさめの言葉の一つでも掛ければ、かき消す事が出来るだろうか。
「あなたが気にする事……」
でも、それでいてこの空気には、いざ声を掛けようとすると、「ありきたりな言葉だね」と、私をあざ笑って逃げ回りそうなフットワークの軽さも感じられた。何だろう、この違和感は。
「あれ? 何かおかしいな……」
「そうだ、おかしいであろう?」
事実、そうして何気なくつぶやいた言葉の方が、彼女の言いたい事に近かった。
「そなたが不審に思った事があれば、何でも聞いてくれて構わない。可能な限り答えようぞ」
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