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この時の彼女の声はとても落ち着いていた。正直聞きにくい事もあるけれど、ここは彼女の決意に甘えてみる事にしよう。
さて、何をどう質問しようか。昨日の状況の何かがおかしい事は確かなものの、それについて質問しようにも、ちゃんと的をストラックアウト出来る程の確信は無い。我ながら、この期に及んで何とも心もとない。
ただ、思い返してみると、彼女の説明を聞けば聞くほど、今回起きた事と少しずつ食い違っていくのを感じた。漠然とではあるけれど、❝話が違う❞というか……。
じゃあ、それに気が付いたのはいつだろう? 頭の中で記憶の早送りと早戻しを繰り返してその瞬間を探すと――、
――――「しかし、そなたが我らを恐れるのも無理は無い。現にあの2人のヘソは、もう少しで危うく天界に運ばれる所だったのだからな」――――
ここだ! 私がおかしさに気付いたのは、少し前に聞いたこの言葉だ!
だとしたら、まずは彼女にこうたずねてみよう。
「田中君達のおヘソって、何で天界に? もしかして、何回も密漁してたの……?」
彼女が語るカミナリ様は、一旦は盗人のおヘソを取っても、反省したらすぐに返して釈放してくれる、かなり気の長い人だったはず。そんなカミナリ様を本気で怒らせる程、2人が密漁のプロだったとは考えにくい。あの浜辺は彼らや私達の住んでいる場所からかなり離れているし、何度も狙うのにアクセスが良いポイントとも思えない。
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