ベッドの上で昔ばなしを

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「つまり、管理してるカミナリ様がいなかったからトラブルが発生しちゃったって事だよね? もう、あんな大事な時にどこ行ってたの!?」 そこの社の管理者であるカミナリ様には、ちゃんと責任持って見守っていて欲しかったな。思わずレイネの背中に、強い言葉の塊をぶつけてしまった。元はと言えば田中君のせいなんだけれど、私が社で使ったお賽銭を返して欲しいと恨みたくもなる。 「いや、今あの社には元々雷などいなかったのであろう」 「どういう事……?」 管理者不在!? ここまで来ても、話の視界は今一つはっきりとしなかった。一つ雲を抜けたと思えばまた次の雲にぶつかるような感覚だ。 「あのような社、今となっては無用の長物。即ち、現代では使われておらぬのだ」 「使われてないの!?」 そもそも社は今使われていない!? さらに厚い雲に目の前を覆われたような気分だけれど、こうなったら黙って彼女の説明を聞いた方がいいのかもしれない。 「ああ。時代を経るにつれ、社を取り巻く状況は大きく変わっていった。浜辺での密漁は年々減少の一途を辿り、仕掛けを動かす機会が減った。密漁が減るのは喜ばしい事ではあるが、抑止装置としての役割を失う事が皮肉にも社の存在価値を揺るがす事となった。また、装置を起動させるには我らの力が必要だが、時を同じくして同胞の地上への往来が減り、動かす事が出来なくなった」 彼女曰く、❝自動おヘソ取り装置❞は密漁が減ったのでだんだんと使われなくなり、カミナリ様も来なくなったので使えなくなった。それは、社の存続にも影を落とした。
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