ベッドの上で昔ばなしを

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「力を消耗していなければもう少し良い勝負になっていたかもしれぬが……、いずれにせよ不便極まりないな」 「そうだよね、あれじゃ修理したい時に人が入れなくて困っちゃうよね!」 何気無く言った言葉が、彼女のプライドを刺激してしまったかもしれない。カミナリ様の世界にも、カギのトラブルに対応してくれる人っているのだろうか。 「❝横取りされてはたまらぬ❞と考えたのかも知れぬな」 「え……?」 彼女の言葉から、急に❝私達以外の誰か❞の存在を感じて、背筋がゾクっとした。おヘソを横取りされないように本殿の扉を厳重にロックしたのは誰か。 ……いや、❝誰が❞とたずねる必要はもう無い。 「じゃあ、やっぱりレイネ以外のカミナリ様がいたの!?」 「そうだ。敷地内にこそいなかったが、離れた所から一部始終を見物していたと見て間違い無い」 あの時、彼女以外のカミナリ様がいた!? でも、一体どこに隠れていたのだろう。私達が社に入ってから出るまで、カミナリ様の姿は見えなかった。田中君達がおヘソを取られてしまったのも、ずっと昔に使われていた❝自動おヘソとり装置(仮)❞が間違って作動しただけで、管理者のカミナリ様はいないものだと思っていた。 「え……。だとしたら何で止めてくれなかったの!?」 自動の仕掛けが誤作動したのなら、責任持って止めてくれないと困る。レイネ任せにするなんてひどい。 「って事はまさか……」 そう、納得の行かない気持ちの中に、答えが既に含まれていたのだった。
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