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「そのまさかだ。あの場にいたのは、且つて社に祀られていた者などでは無い、別の輩だ」
「だからだったのか……」
管理者とは別のカミナリ様がいたと考えると、不気味で嫌な想像しか浮かんで来ないけれど、話としては大いにしっくりくる。もし、今回の件に彼女が話してくれた、昔の慈悲深いカミナリ様が関わっていたとしたら、ここまで大変な事にはならなかった、むしろ最初から起きなかったんじゃないかと思う。
「そのカミナリ様って、何で装置任せで見物してたの? 自分でやれば良かったんじゃ……」
たった2人分なら自分の手でおヘソをもぎ取るか、装置で取った後のおヘソを拾って持ち帰った方が早いよね。……我ながら言ってて恐ろしくなった。
「あ奴は単に仕掛けの動きを見物したかっただけだ。今となってはあのような仕掛けが動く様を目にする機会等、まず無いからな。そして、私の推測が正しければ、奴は仕掛けに手を加えたに違い無い」
「その人が改造したって事?」
「ああ、社は過去の地上の遺物故、天界でも史料が潤沢に残っておらず、明らかにされていない事も多い。それを踏まえても仕掛けに不審な点が多く、本殿の扉の辺りで、後世の何者かが手を加えたのだと睨んでいた」
犯人の目的は人間のおヘソを取るのではなく、装置が動く所を見る事にあった。しかも、魔改造して前よりもおヘソを取ってから天界に送るまでのオートメーション化が進んでいた。何て嫌な効率化をしてくれたんだと、ツノの生えたマッドな機械マニアの姿を勝手に想像してしまう。
「それが確信に変わったのは、運び役の黒き鳥だ」
最初におヘソを運んでいた白い鳥が落とした物を、いきなり飛んできて横取りしようとした黒い鳥。どちらも折り鶴が変身した姿だったけれど、そこに重要なヒントが隠されていたようだ。
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