ベッドの上で昔ばなしを

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「白い方は元々社にあった古い折り鶴で、細部まで丁寧に折られていた。対して黒い方は折り目が所々ズレており、頭でっかちで羽の短い不格好な代物であった。あれでは力を込めても真の鳥の姿に似せる事は出来ず、飛行も安定せぬ」 「へえ、折り方が汚いと飛び方にも影響しちゃうんだ」 彼女が電撃で撃墜した折り紙には確かに出来栄えに大きな差があり、白い方は数学の要素を感じるくらいの折り目正しさだったのに、黒い方は折る位置のズレが目立ち、エッジのシャープさも無く、折り慣れていない感じだった。あれなら私の方が上手に折れると思う。 「うむ。最近は折り紙に親しまぬ者が多いと聞く。社の者ならあのような粗末な出来を用いぬし、ましてや趣味の悪い黒光りした紙など用いる筈が無い。仕掛けの改造にこそ多少の見所はあったが、それだけだ」 「犯人、ボロボロに言われちゃってるね」 ❝カミナリ様の折り紙離れ❞によって、真相が明らかになった。犯人は機械いじりは得意でも折り紙作りの腕は無いらしい。黒のメタリックな紙を選ぶセンスも中二病っぽいし。 「それでも、鳥の姿だった時は速くてよくわからなかったけれどね。あの時は❝もうダメかも❞って諦めそうになったよ」 「何を言うか。我々が負ける可能性等、万に一つもあり得なかった。元より問われているのは勝ち方だけだ」 「うわうわ出た出た……」 犯人の健闘(?)をちょっとだけ称えつつ、あの時の大変な苦労を振り返ろうとしたら、またこれだ。一時は完全にへばってたのに、強がりを言うのも程々にしてよね。 「奴が黒い鳥を飛ばした時点で勝負の大勢は決していたのだ。あの黒い鳥は本殿とは別の方向から飛んで来た。あれは仕掛けの中に組み込まれていた物では無い。白い鳥の落下に焦った奴が手元から飛ばした物だ。つまり、仕掛けの力だけでヘソを運べなかった時点で、奴の技術は敗北していたのだ」
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