ベッドの上で昔ばなしを

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「そこで勝ってもなあ……」 機械マニアのプライドを打ち砕いても、おヘソを持って行かれちゃっては意味が無いと思う。 「奴め、機械いじりは得意でも術は苦手と見える。折り鶴を飛ばすには紙の折り方だけで無く力の込め方も重要だが、上手く力を伝えられないせいで旋回がぎこちなかった。お陰でさほど労せず捕える事が出来た」 「運動苦手なタイプみたいな感じかな?」 装置によるおヘソ集めが失敗した事で、犯人が苦手な術での勝負に持ち込めた。なるほど、そう考えると黒い鳥は犯人の敗北宣言と言えるのかも。 「でも、レイネのお陰で一件落着して良かった! 犯人もまさかカミナリ様同士で戦うとは思ってなかったから、焦ったんじゃない?」 よくよく考えたら、運の悪い犯人だ。あの日レイネさえ学校行事であの浜辺を訪れなければ、企みは成功していたと思う。 「いつの時点で気付いていたかは解らぬが、奴の計画が狂ったのは確かであろう。だが、勝利の要因としては充分で無い」 「そう?」 「私一人の勝利では無い。そなたらがいてくれたからこそ、私も十全に力を発揮出来たという物。詩乃、そなたには大いに世話になった。危険を冒して最後まで行動を共にしてくれた事、誠に感謝するぞ。此度の作戦の成功はそなた無しでは語れぬ」 「まあ、それほどでも……。あるのかなあ?」 自信満々かと思いきや、急に謙虚になってストレートにお礼をぶつけてくるから困っちゃうよね。でも、カッコいい事は全部彼女がやっていたから、あまり実感が湧かないな。私は、人差し指で頬をかきながら、彼女の言葉をどう受け止めようか悩んでいた。
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