ベッドの上で昔ばなしを

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「仕方が無い、ここは術を使うか」 そう言って、彼女はあおむけのまま浮き上がってベッドから出ると、飛行石を首に掛けた少女のようにゆっくりと水平に高度を下げ、床に敷いていたクッションの上に着地した。 「ふう、難儀したぞ」 「ずるーい!」 2段ベッドの階段を下りると足にくるからって、横着し過ぎている。窓の外にいた猫が、その姿に驚いて屋根をンゴロンゴロと転げ落ちて行ったけれど大丈夫だろうか? 「さあ、詩乃もそろそろ身体を起こすのだ。駅前の見回りに行くぞ」 「き、今日は疲れてるんだから、お休みしようよっ……」 彼女は休みの日に駅前の見回りを日課にしていた。それは、初めて駅前に行った時に事件に巻き込まれて以来、謎の使命感から続けている事で、同時に駅前散策にもなっていた。 でも、この街は基本的にのどかで平和だから、こどもで一般市民の私達がそこまで張り切る必要無いし、ここ数日で色々な場所を見て回ったから、今日は休んでもいいと思う。 「いい若者が軟弱な事を抜かすな。そうだ、茉莉子達と行ったという、駅前にある抹茶ジェラートの店を案内(あない)せい」 「はい?」 唐突に行き先として挙がったのは、駅前の抹茶ジェラート屋さんだ。こんな時で無ければ案内してあげたいけれど……。
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