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「此度の礼と言ってはなんだが、そなたの分は私が持とう」
「いえ、お気持ちだけで……」
ご褒美は光栄だけれど、駅前まで自転車を漕いで行くのは結構キツイので、諦めよう。
「自転車が無理なら、電車でもいい」
「そういう問題ではなく」
電車に乗るのだって、駅まで歩くのも地味にキツイので、今日は家でのんびり休みたい。一体何が彼女をここまで突き動かすのかわからない。お茶が好きだからかな。
「そうか、そなたの痛みがそこまで辛いとは思わなんだ……」
「そうなんだ、ごめんね」
彼女の声がトーンダウンしていくのを尻目に、私は壁に向かって寝返りを打ち現実逃避を決め込んだ。
あいたた、寝返りを打つだけでも痛みが! でも、これでゆっくり出来るね。彼女の話を断った事に少し罪悪感を抱いたけれど、身体を休める事も大事大事……。
ブーン、バチバチッ――――
だが、眠ろうとしたら、背中越しにとてつもなく不穏な音が聴こえてきた。電気が行き来する時に鳴る弾けるような音だ。また寝返るのはツラいが、振り向かずにいたらもっとツラい事が起きそうだ! 急いで音の鳴る方へ振り返ると、
「手ずから治療を施して進ぜよう。これなら痛みが紛れる事請け合いだ」
レイネが両手の平の間に電流をほとばしらせながら、仁王立ちで構えていた。眺めている分には神秘的で美しいこのスパーク、彼女は私の肩や脚にかざして電気治療に使う気だ。冗談じゃない、絶対痛いに決まってる!
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