ベッドの上で昔ばなしを

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階段を1段下る度に2人の脚が悲鳴をあげ、2~3段ずつ止まってしまった。 「うぁっ! こんなに筋肉痛が出たの初めてかも……。昨日頑張り過ぎたからかなぁ」 「全く、美味い甘酒も考え物だ……」 それもこれも、昨日あった出来事のせいだ。田中君が騒ぎを起こして時間をロスした分長く走ったし、田中君の飛ばしたドローンのせいで砂浜に転んだし、田中君を助ける為に雨の中を悪戦苦闘したし。振り返るとだいぶ田中君のせいなんだけれど、彼もあの後色々大変だったと思うし、それはもう言わないでおこうかな。 ようやく玄関で靴に足をくぐらせ、つま先を地面にキックしてかかとを入れる。大体は上手くいかなくて、結局は手を使う事になるけれど、しゃがむのは億劫なので気合で納めたかった。 まだかかとが入っていないまま、外に出て戸締りをする。 私が持っている鍵の握る部分には、小さなイセエビのキーホルダーが付いている。これは海の家にあった『いせえび~ず』というガチャガチャ(全6種)で、お父さん達へのお土産に高額なイセエビのはく製を諦めたレイネが、代わりにと回した物だ。彼女は類稀なる強運を発揮し、なんと6回目でダブらずにコンプリートしてしまった。それを家族みんなにプレゼントしたの、もちろん私と自分用にもね。 お父さんはもらったその場でウキウキと鍵に取り付け大感激、お母さんは苦笑いしながら「そんなに気を遣わなくていいのよ」と、彼女の頭をポンポンと優しくなでた。お兄ちゃんは「()らん」と頑なに拒否したので、席を外したタイミングを見計らって、私が取り付けておいた。
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