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今日もどこかで稲光
自転車を漕いで、近くの駐輪場に自転車を停め、歩く事数分。抹茶ジェラートのお店のある通りへとやってきた。相変わらず絶賛筋肉痛中だったので、駐輪場がちょっと離れた所にあるのを恨んだ。
ここは他の駅前通りと違い、賑やかな中にも落ち着きがある。きっと市役所に近いからだろうね。筋肉痛で脚がこわばっていた事もあり、通りに合わせたエレガントな歩調でお店にたどり着いた。
のれんに木戸という、和をモチーフとした店先は老舗の和菓子屋さんを思わせる。のれんを手で上げながら軒をくぐると、ちょうど先客もおらず、すぐにショーケースの中のジェラートが私達をお出迎えしてくれた。
お目当ての抹茶ジェラートは濃さの違う物がいくつも並んでいて、入っている抹茶の量が多い程香りや苦みが強くなるのはもちろん、見た目にも色の濃さに歴然とした差が出る。私達お客は、黄緑から深緑へとグラデーションのように変化するラインナップから、目で味を判断してオーダーする事が出来るという訳。
「さて、どれにしようか。茉莉子の言っていた、一番深みのある物に挑もうか」
「濃過ぎるかもよ? 最初は真ん中くらいの濃さにしてみたら?」
一番濃い物は抹茶をふんだんに入れた贅沢な商品で、甘みをはるかに凌ぐ茶葉の苦味と渋味があるそうだ。通好みというか上級者向けで、私もまだチャレンジした事が無い。
「うむ、そうしてみよう」
レイネなら大丈夫かもしれないけれど、次に来た時でも遅くは無いかな。
「私はほうじ茶味にしよ。そしたら、あそこの公園で食べようか」
「解った」
お会計を済ませてジェラートの入ったカップを受け取った私達は、市役所の目の前にある公園で食べる事にした。
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