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この公園は道の様に細長く伸びていて、市役所前の階段まで続いている。両脇には街路樹やベンチ、道の中程にはオブジェや噴水を配した美しい公園だ。単にベンチに座って脚を休めたいのもあるが、園内を吹き抜ける風の心地良さに包まれつつジェラートを食べたかったので、ここに決めたのだった。
「よいしょ。あいたたた……」
「ふぅ、雷を長く歩かせてはならぬ……」
木陰のベンチに座るだけでも一苦労だ、早く治るといいけれど。
「それでは、いただきまーす!」
さっそく、スプーンでジェラートの山からひとすくいする。今日の陽射しは昨日よりも刺激が強く、早くも山肌を滑らかに溶かしきらめかせる。茶器に似たデザインのプラカップは高級感があるが、記憶の中のお値段よりだいぶリーズナブルだった。高校生になって、おこづかいの金額が上がったからかな。
「うん、ビターで美味しい!」
「うむ、甘さの中にも深みがある」
口に入れた瞬間に、お茶の香りと冷たさがいっぱいに広がり、身体の外ではうちわで扇いだように優しい風が涼やかさを添える。たまにはこういう贅沢があってもいいよね、彼女も無事この味を気に入ってくれて良かった。
「そう言えば、お千佳坊は来ぬのか?」
実は、昨日浜辺を歩いたメンバーの内、千佳ちゃんは家が近いので一緒にどうかとメールで誘ったが、
「うん、筋肉痛とだるみがすごくてベッドで寝てるんだって」
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