今日もどこかで稲光

2/15

67人が本棚に入れています
本棚に追加
/356ページ
この公園は道の様に細長く伸びていて、市役所前の階段まで続いている。両脇には街路樹やベンチ、道の中程にはオブジェや噴水を配した美しい公園だ。単にベンチに座って脚を休めたいのもあるが、園内を吹き抜ける風の心地良さに包まれつつジェラートを食べたかったので、ここに決めたのだった。 「よいしょ。あいたたた……」 「ふぅ、雷を長く歩かせてはならぬ……」 木陰のベンチに座るだけでも一苦労だ、早く治るといいけれど。 「それでは、いただきまーす!」 さっそく、スプーンでジェラートの山からひとすくいする。今日の陽射しは昨日よりも刺激が強く、早くも山肌を滑らかに溶かしきらめかせる。茶器に似たデザインのプラカップは高級感があるが、記憶の中のお値段よりだいぶリーズナブルだった。高校生になって、おこづかいの金額が上がったからかな。 「うん、ビターで美味しい!」 「うむ、甘さの中にも深みがある」 口に入れた瞬間に、お茶の香りと冷たさがいっぱいに広がり、身体の外ではうちわで扇いだように優しい風が涼やかさを添える。たまにはこういう贅沢があってもいいよね、彼女も無事この味を気に入ってくれて良かった。 「そう言えば、お千佳坊は来ぬのか?」 実は、昨日浜辺を歩いたメンバーの内、千佳ちゃんは家が近いので一緒にどうかとメールで誘ったが、 「うん、筋肉痛とだるみがすごくてベッドで寝てるんだって」
/356ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加