67人が本棚に入れています
本棚に追加
/356ページ
極めつけはお昼休み、森田さんがコンテストに出す写真を見せてくれた時だった。
「わあ、みんな良く撮れてるね!」
「何百枚も撮ったから、その中で結構いい感じのがあったんだよー」
コンテストはプリントしなくてもデータで応募が出来る。彼女は私達が見やすいようにとタブレットにデータを移して大きな画面で見せてくれた。
波打ち際を飛び立つハトの群れ、茉莉子ちゃんグループとの集合写真に海の家のメニュー。つい先週の事なのに、何もかもが懐かしく感じる。
しかし、思い出にどっぷりひたろうとしていた私と違って、彼女の表情はどこか浮かなかった。
「でも、ちょっとおかしいんだよね……」
「何が?」
彼女が画面をスライドして見せてくれたのは、丘の上の大きな神社で撮った写真だった。
「これ見て、全然光って無いんだよ」
「あれ? 灯籠の明かりが消えてる!?」
彼女が神社の石段にあった灯籠を写した写真では、灯っていたはずのあかりが写っていなかった。
実は光っていなかった!? いいや、そんな事は無い。木々に囲まれた暗い石段で、私達が上るごとに明るく灯って出迎えてくれた優しい光を、すっかり忘れる方が難しい。
「それだけじゃないよ、こっちはもっとおかしいんだ」
次に見せてくれたのは広い境内の写真で、そこには威厳のある佇まいの社殿と、若葉茂るイチョウの木々が収められていた。
最初のコメントを投稿しよう!