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「もう、そういうのじゃなくて! 丘の上の神社に行ってから、不思議な事が起こり過ぎてるって言ってるの!」
「おっと、そんなに声を荒げるでない!」
つい声が大きくなってしまったが、その不思議な出来事に彼女が関わっているのは間違い無く、今後の為に少しでも聞いておきたかった。
「ふう……、私とて全てを語れる訳では無いのだがな。そなたに一つだけ話せるとするならば……」
この際一つでもいい。彼女の口から出たのは、
「詩乃、甘酒は美味かったか?」
「うん、とっても。……それが?」
神社で飲んだ甘酒の事だった。カフェのお姉さんが私達に振舞ってくれた、フルーティで飲みやすく、疲労回復に美肌効果もあるという甘酒。それが今回の事とどういう関係があるのだろう。
「あっ! あれ普通の甘酒じゃなかったの!?」
「ああ、❝特製❞のな」
「という事は……、みんなが速く走れたのも甘酒のせいって事!?」
私達はバスの遅延でスタートが遅れ、途中神社に寄り道したりアクシデントに見舞われたので、かなりのタイムロスがあった。それをカバーする為、神社を出てからは走ってゴールを目指し、見事制限時間に間に合った。最初は❝一生懸命頑張ったから❞だと思っていた。
しかし、走ったとはいえほぼ一番乗りで海の家に着いた事、森田さんがスマホに入れていた歩数計アプリのログでは、バイク並のスピードが出ていた区間があった事、5人全員の走りが陸上部の目に止まった事など、後から説明のつかない事が見えてきた。まさかそれが甘酒のせいだったとは思わなかった。
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