今日もどこかで稲光

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「うむ。あの甘酒は原料こそ下界の物だが、神社秘伝の製法で作られている。飲むとたちどころに身体を癒し、飲む程に(みなぎ)る活力を得る。そして、一時的にではあるが人並外れた力を発揮する」 「そんなに凄かったんだ」 高い栄養ドリンクの更に上を行く効果を持つ甘酒なら、毎日でも飲みたいな。 「だが、人並外れた力という物は、言い換えれば己の限界を超えた力。それを常に出し続ければ、次第に身体は悲鳴を上げる。ああ、まだ身体の節々が痛む……」 「だからか……」 その代償が、今までに味わった事の無い地獄の筋肉痛なのだろう。あんなスピードで走れば身体に負担が掛かって当然だ。千佳ちゃんは今日も筋肉痛からくるグロッキー状態で、危うく欠席しそうだった。やっぱり飲むのは時々でいいかな。 「安心せい、あの甘酒は元々身体を癒す為の物。筋肉痛もじきに癒え、何の後遺症も残らぬ。まあ、神社の者も良かれと思って振舞ってくれたのだ、ここは大目に見てやろうではないか」 「わかったよ」 あの優しかったカフェのお姉さんに悪気があったとは思えないし、これもいい思い出の一つにしよう。 「よし、話はこれで終わりだ」 もう少し聞きたかったけれど、今はじっと我慢だね。 彼女は話を終えると、自分の机に飾ってある白と黒の折り鶴を手に取って、手のひらに乗せた。それは、小さな社で拾った物を彼女が持ちかえったのだった。
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