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「ていうか、その折り鶴持って来て良かったの? そっちの黒いのは悪いカミナリ様が作った奴だし」
白い方はともかく、黒い方は散々私達を苦しめてきた相手の持っていたアイテムだから、変な事が起きないか心配だ。
「固い事を言うでない。こうして2羽仲良くやっている事だし」
彼女が人差し指で折り鶴に触れると、中から光りを放ち、みるみる本当の鶴の姿に変化した。
「うわっ、部屋の中で羽ばたかせるのはやめて!」
2羽ともケンカせず、羽根を散らしながら部屋の中を元気に飛び跳ねている。ハリボテみたいと酷評された黒い鳥も彼女が折り直したので、メタリックな事を除いては、普通の鳥と見分けがつかない。元々の折りジワがついたせいか、結構シブい表情のニヒル鳥だけれど。
――――ピカッ!――――
そんな時、部屋の外で雷が光り、少し遅れて鳴った音が室内の騒がしさをかき消した。
「さあ、この地にも稲光の到来だ」
「わあ……!」
そう、これは稲光。昨日は西の方で鳴ったとニュースに出ていた。きっとマダムの田んぼでも豊作が祈願されたのだろう。
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