カミナリ様の放課後は

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「おお、(かたじけな)い。流石は我が案内役、宜しく頼むぞ」 「その代わり、先にウチの部に寄らせてね。ウチ、部活紹介始まるの早いから」 「構わぬ。その後、他の部を訪ねようぞ」 * * * * * * * * * * * * * * * * * 我が演劇部の練習場所は、本校舎と独立した離れのレッスンスタジオだ。昇降口から外に出て北西に歩く事3分、すっかり若葉が生い茂った桜の木に囲まれた中に建つレトロな洋館の2階にある。スタジオは少し小さめの体育館くらいで、大所帯の我が部の練習にも支障をきたさない広さがある。 高校の建物にしては贅沢な施設だが、隣にドンと構える大きな講堂の陰に隠れてイマイチ目立たない存在だ。しかも、講堂や周りの木々のせいで日当たりが悪く、洋館のそばにはコケやシダが広がり、不気味な雰囲気を醸し出している。今日の空は雲が多いので更に暗く感じる。こんな日は、いかにも練習でミスをして梶本先輩に怒鳴られそうな予感がして気が重くなる。まあ、晴れていたとしても結果は変わらないのだけれど。 洋館の正面入り口に到着すると、2年生の福士さんが見学希望者の列整理を行っていた。 「福士さん、ご苦労様です」 「あっ、早川さん、お久しぶり! 元気だったかな?」 私が挨拶すると、彼女は笑顔で返してくれた。清潔感のあるショートカットは前髪が目元にかからないよう左右に流されていて、イケメン感が漂う。性格も優しくて話しやすい人なので、下級生からの人望も厚い。 「はい、頑丈なのだけが取り柄ですから」 「そっかあ……。こうして、また元気に練習に来てくれてよかったよ!」
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