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今年の連休は例年よりも長く、その間は部の活動も無かったから、先輩も私の顔を懐かしく感じたのだろう。私にはもったいないくらいの対応で、恐縮してしまう。
「福士さん、この子は『遅れてきた新入生』のレイネです。見学に連れてきました」
「天宮レイネと申します。どうぞ宜しく」
「わあ、新入部員まで連れてきてくれたのね! 早川さん、本当にありがとう! 天宮さん、これからよろしくね!」
「おお?」
先輩は私達の手を取り、一方的に熱烈な握手を交わしてきた。どちらかと言えば落ち着いたタイプの先輩にしては珍しいリアクションで、初対面のレイネも意表を突かれて面食らっていた。
このままだと即入部させられかねないので、一旦断りを入れておいた方がいいだろう。
「あの、福士さん、この子は見学に来ただけですから! この後も他の部の見学に行きますので……」
「そっか……。まずはウチの部の練習だけでも見てってよ、面白いから」
「有難うございます。楽しみにしております」
福士さんも冷静さを取り戻し、私達に向かって両手を合わせ「ゴメン」のジェスチャーを見せた。
「早川さん、そろそろ打ち合わせがあるから着替えてスタジオに行った方がいいよ。部長が説明するって」
「あっ、わかりました! すぐ行きます。レイネ、後でね」
「うむ」
レイネを見学者の列に並ばせて、私は1人洋館の更衣室へと向かった。
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