カミナリ様の放課後は

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部長はいきなり説明に入らず、ひとまず関係のない話題に見学者を引き込んだ。その軽やかなトークに、カタかった見学者の表情もほぐれ、『つかみはOK』といった所だろう。 「ねえねえ詩乃ちゃん、あの子が君の親戚のレイネちゃんだろ?」 「あっ、はい」 部長の話が続いている最中で、後ろにいた遠山先輩から小声で話しかけられた。 「あの子を連れてきてくれたんだね。君はいつかデカい仕事をしてくれると思ってたよ!」 彼は、私の肩に添えた手の人差し指をレイネの方に伸ばして彼女をロックオンした後、手首をくるっと返して親指を立て、私に『グッジョブ!』のジェスチャーを示した。 鼻筋の通ったイケメンで、ウチのお父さんと同じくらい背の高い彼は、よほど自分に自信があるのか、女の子に気安く触れる事にもためらいが無い。私が女子扱いされていない可能性もあるけれど。 「あの、実は演劇部に入りたい訳じゃなくて、校舎の場所がわからないから一緒に行動させてるだけなんです。紹介が終わったら他を案内する事になってるので……」 「他の部なんてどうでもいいじゃん。もうウチに決めさせちゃいなよ」 「そうは行きませんよ……」 彼は顔が良くて気配りも上手な人だけれど、すぐ女の子にちょっかいを出すから、校内でも要注意人物とされている。この熱のこもったアプローチも部の為じゃなくて、たくさんの女の子に囲まれたいだけだってわかっているから、素直に受け止める気が起きなかった。
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