カミナリ様の放課後は

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「遠山君は休み明けも平常運転ねぇ。まだ紹介も終わってないのに」 私が困っているのを察して、米満(よねみつ)先輩が割り込んできた。 ロングヘアで前髪をかき上げたニキビ一つ無いツルツルのおでこと、赤い縁の眼鏡がトレードマークの彼女はまさに文学少女という感じで、部内でも主に脚本を担当している。 「よねちゃん、止めないでくれ……。これは部の存亡を賭けた大事な選択なんだ、わかるよね?」 遠山先輩は米満先輩の肩に手を載せながら、わざとらしく作った真顔を見せつけて、彼女を口説こうとした。彼女も特に嫌がる素振りを見せず、笑顔で彼を見つめていた。 もしかして、私の知らない内に2人は付き合っていたのだろうか。だとしたら、彼の暴走を止めてくれるのは期待出来ないかもしれない。 どうなってしまうのかハラハラしながら見守っていると、彼女はゆっくりと大きく息を吸い込み、 「いぃ~けなぃんだぁ~いけなぃんだ~♪ 遠山君わぁ~手が早い~♪ 先生にぃ~言ってやるぉ~♪」 突然、ソプラノ歌手のように伸びやかに歌いだして、遠山先輩の危険性をみんなにお知らせした。まさかの『告げ口ソング』に、スタジオのあちこちからクスクスと笑い声がこだました。 「ちょっ、よねちゃんっ! 俺達仲間じゃん、やめようぜそういうの……!」 「あ~らぁ~らぁ~こぉ~るぁ~るぁ~♪」 恥ずかしくなった遠山先輩が慌ててお願いしても、彼女は歌を止める気が無く、ニコニコ笑いながら美しい声を響かせて『2番』をくちずさもうとしていた。
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