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彼女の迷演技によってざわめきはますます大きく広がり、
「ギャップがありすぎて、セリフが全く頭に入って来ないわ。イタリアの小さな村の老婆かな……?」
「山の上って、トリュフとか生えてそう」
観客のみんなは困惑しつつも、どうにか感情移入を試みようとして、それぞれ思い思いの想像を繰り広げていた。
「婆様、いつもすまねえなあ。おらが乳飲み子おぶってるから手が離せねえばかりに……」
「なぁに、構わねぇよ。うちの婆ちゃんは子供が大好きなんだ。それより、気ぃ付けるように言っといた方がいいぞ。近頃、沢には……」
あとの2人はなかなか筋が良かったから、ギリギリ日本の昔ばなしとして踏み留まれた。
この後、各メンバー2~3回ずつセリフが用意されていたが、遠山先輩の『棒読み百姓』とレイネの『サムライ婆さん』が足を引っ張り、全体的に笑い無くしては観られない雰囲気のまま幕を閉じた。
「はーい、第1グループのみんな、お疲れ様! トップバッターで緊張したと思うけど、良く頑張りました。 みんな、拍手ー!」
出演者がみんなに向かってお辞儀をした後、グループ内でお互いの健闘を称えるべく握手が交わされた。
けれど、遠山先輩がレイネと手を結ぼうとしたら、
「うわ、いってぇ! なんだコレ、バカ強い静電気来たわ……」
「これは失敬」
握手すら上手く出来ず、彼女の初舞台は最後まで締まらなかった。
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