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「ここで、ミュージカルで踊るダンスの一部を見てもらいたいと思います」
今日はその練習風景披露の一環として、ダンスを見せる事になっていた。
ここでの動き一つで新入部員の数が決まるかと思うと、責任重大だ。
一応連休中も部屋の中で練習は行っていたが、他の子達より下手な私はマイナスからのスタートなので不安は拭えない。
「部長、梶本さんがいないんだけど」
「どうしたんだろうねえ」
「後がつかえてるんだから、福士さんに仕切らせた方がいいんじゃね?」
初めに渡されたスケジュール表では、このダンスの説明は、あの梶本先輩が担当する事になっているが、当の本人は未だスタジオ入りしていなかった。
見学者が他の部活を見に行く機会を確保する為、タイムスケジュールは厳密に決められていた。他の先輩達が言うように、彼女待ちで時間を引き延ばす事は出来ないので、福士先輩の指示で私達1年生女子は等間隔に広がり、スタンバイに入った。
「みんな、先月ぶりだけど今までやってきた事を丁寧にやればいいからね。緊張せずリラックス……」
「わりい、遅れた」
スタート一歩手前で、やっと梶本先輩がスタジオに入ってきた。
「梶本さん、遅いよー。もうみんなスタンバイ出来てるよ?」
「わかってる。後はあたしがやる」
彼女は部長の指摘もまともに受け付けず、何があったかは知らないが、いつにも増して機嫌は良くなさそうだった。
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