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彼女のポニーテールは前髪も後ろにひっつめ、髪色は連休前よりも紅く染まっていて、過去最高の威圧感があった。そんな彼女の姿に戸惑いの視線を送っていた見学者達にもガンを飛ばすみたいに睨みつけ、スタジオの空気が一気に冷え込んだ。
「福士、どいて。代わるよ」
「うん……」
福士先輩を脇にはけさせた彼女は、私達の前に立ち、
「あんた達、休みの間しっかり自主練やってたんだよね? 恥ずかしい動き見せたらシメるから、そのつもりでやんなよ」
「はい……!」
見学者の前での体裁も考えず、スパルタ全開で私達をけん制した。
今日の出席率は1人1人の動きが重ならないくらい低めで、上手に出来る人達の陰に隠れる事は期待出来そうになかった。ミスをすればすぐ先輩に見つかってしまうだろう。みんなの前で怒られるのだけは避けたかった。
それに、連休中レイネにも練習を手伝ってもらっていたから、彼女に恥ずかしい姿は見せたくない。
「今から曲流すから、構えな!」
先輩の指示通り、私達は足を肩幅に開き、うつむいた姿勢を取った。そして先輩がミニコンポのボタンを押し、ついにダンスタイムがスタートした。
私達が踊るのは、劇中のアイドルユニットのダンスで、アイドル的なかわいらしい仕草とダンスユニット寄りの激しい動きが混ざった複雑なもので、ただでさえダンスが苦手な私を余計に苦しめるものだった。
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