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まずはイントロに合わせて右手を高く掲げ、指先を見つめるポーズを取る。その手を「く」の字を描くように振り下ろした後、サイドスローのように前へと突き出す。
ここは連休前から出来ていた事なので、特に問題無くこなせた。
次に、足を交互にクロスするように踏み出すボックスステップだ。
ダンスでは基本中の基本なのに、私はこの辺から既につまずき気味で、足運びがぎこちなかった。気を付けてステップしてみたものの、
「そこ、手足バラバラにすんなよ!」
案の定、手の動きがおろそかになっていたのを梶本先輩に指摘されてしまった。その声にビクついた私はその次の動作も一歩遅れてしまい、振り付けが頭から飛んでしまった。
こういう時にパニック状態になったら、全てがダメになってしまう。忘れたなら思い出すしかないと、私は急いで前列で踊っていた森田さんの動きを確認した。彼女はダンスも上手いから見本として最適だ。
そうだ、次は両手を胸の前でクロスしてから両側に開くんだった。彼女のお陰で何とかみんなと同じ流れに戻って来る事が出来た。
でも、静かに踊れていたのもここまでだった。
悲劇はサビの部分――、身体を半身にして後ろを向いてから徐々に前へと振り返るポーズの時に起きた。
「おい早川ァ! そんなんじゃねぇだろが!!」
梶本先輩の名指しの怒号がスタジオに響き渡った。私は何がいけなかったのかわからず、先輩の方を向いてオロオロするばかりだった。
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