放課後の分かれ道

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彼女の挨拶で、スタジオの雰囲気は完全に凍り付いた。思えばこれも練習の時々で見られる光景だが、初めて目の当たりにする見学者にはさぞ刺激が強かった事だろう。中には怯えた表情で震えた人もいて、せっかく来てくれたのに、なんともかわいそうな事をしてしまった。 彼女は最後にもう一度私達と見学者を睨みつけて、横にはけていった。 「それでは、時間になったので説明を終わります。入部届はこの後すぐに受け付けるので、『楽しいな』と思ってくれた人は是非入部をお待ちしています。今日はどうもありがとうございました!」 「ありがとうございました!」 部長の締めの挨拶が終わり、重苦しい空気の説明会は解散となった。 「終わり良ければ全て良し」という言葉が本当なら、その反対もあるのだろう。途中までは和気あいあいでいい感じに進んでいたのに、最後のダンスで台無しになってしまった。こんな殺伐とした雰囲気の部に飛び込んでくる人がいるだろうか。私だったら絶対入りたくない。 案の定、見学者は次々と逃げるように退場し、入部受付係の福士先輩の所にはまだ誰も来ていなかった。 「うーん、一網打尽とは行かなかったか……。まあ、最終的にはウチに入ってくれるでしょ。みんな、紹介お疲れ様! みんなも、追加告知日だから興味がある所に行ってもいいよ。今日は残った人だけで小規模の練習をやろう」 「はい!」 部長は新入部員がすぐに獲得出来なかった事に少しガッカリした様子だったけれど、だいぶ楽観的な見通しを示しつつ私達を労った。あれだけ梶本先輩に(おど)かされた人達が戻って来るとも思えず、笑顔こそ見せてはいるが、もしかしたら私達を動揺させまいと平静を装っているのかもしれない。
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