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それはそれとして、忘れてはいけないのがレイネに他の部を案内する事だ。
彼女は他の見学者達が退場した後も、入り口の脇で背中を壁に付け腕組みをして、私が自由になるのを待っていた。
「レイネ、お待たせ」
「おお、ご苦労。中々に興味深い催しであった」
ワークショップでは迷演技を披露していたので、恥ずかしい思いをしていないか心配だったが、特にそういった素振りも無く、表情は晴れやかだった。
「疲れている所済まぬが、案内を頼むぞ」
「うん。その前に部長に許可取って来るから」
追加告知日は、既に所属している部を抜け出し辛くて他の部活に行けないという事が起きないよう、校内ルールとして生徒の自由な移動が保証されていた。部長も他の部の見学に行っていいと言っていたし、誰かが止めるという事も無いのだけれど、練習をする人がいる中黙って出ていくのも気が引けるので、部長に一言告げてからスタジオを出る事にした。
「部長、この子は今日来たばかりでまだ校舎の場所が把握出来てないんです。他の部の子から見学に誘われてるんで、私も一緒に周ってきていいですか?」
「全然OKだよ、案内して差し上げて。早川さんも他の部見てきたらいいよ。天宮さん、ウチの部はどうだったかな?」
部長は快く退出を許可してくれ、後ろについてきたレイネにも優しく声を掛けてくれた。
「はい、楽しい時間でした。大変参考になりました」
「そうかい。やりたくなったらいつでも待ってるからね。じゃあ、行ってらっしゃい!」
「ありがとうございます!」
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