放課後の分かれ道

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笑顔で送り出してくれた部長に2人でお礼を言ってスタジオを出ようとした。 遠山先輩が「えー、行かないでぇ!」と甘えた声で引き止めてきたけれど、こればかりは決めていた事だからと、笑って会釈をして背を向けた。なんだかんだで、彼も悪い人じゃないんだよなあ。 「待ちな! おい……、ふざけてんの?」 軽やかな気分の私達を、突然殺気立った声が呼び止めた。それが梶本先輩だという事は振り返るまでもなくわかった。おそるおそる振り返ると、予想通り鬼の形相が待っていた。 「あんた、ダンスもまともに出来てないくせに他んとこ行こうとしてるわけ?」 「あの、彼女を案内してあげたいので今日は……」 「へぇ、あんたにそんな余裕あるんだ? あんたが一番踊れてないんだから、人の世話してないで残って練習やんなよ!」 「はい、すいません……」 顔まで紅潮して赤鬼と化した彼女には、部長達と違って私の弁解を素直に聞いてくれる余地が全く無かった。 どうすればいいのだろう。私がみんなの足を引っ張っているのは確かだけれど、説明会が終わるまで大人しく待ってくれていたレイネをほったらかしにする事も出来ない。「今日はその分家で自主練して穴埋めします」とでも言えば許してくれるだろうか。いや、逆にその場しのぎの言い訳と取られて火に油を注ぎかねない。上手く彼女を納得させられるような言葉が思いつかず、考える時間の長さに比例して沈黙も長くなっていった。 「梶ちゃん、それはルール違反だよ。早川さんにも他の部活を見る権利はあるんだから……」
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