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「そうだよ、強引にプロテクトしたのがバレて先生に目を付けられたらどうすんだ?」
「知るか、そんな事!」
彼女は福士先輩と遠山先輩の言葉にも耳を傾けようとせず、むしゃくしゃした気持ちを紛らわすべく、また竹刀で床を叩いた。その衝撃は波紋のようにスタジオ全体へと伝わり、他の部員達も自分達に飛び火しない位置から、私達のやり取りを見守っていた。
「おい、早川! その子のお守りをするのはあんたの勝手だけど、抜け出すんだったらもうあんたの居場所は無いと思いな!」
とうとう最後通告が出された。こんな厳しい事を言われるとは思っていなかったから、どう答えていいかもわからず頭が真っ白になりそうだ。
「梶ちゃん、いくら何でもそれは……」
「あの、私は……」
「何なの!? 残るのか行くのかはっきりしなよ!!」
いくら急かされても、彼女の求めている答えには辿りつけそうもない。でも、そう答えなかったらどういう結末が待ち受けているのだろう。
いっその事、賭けに出て思っている事を全て伝えてみてはどうだろうか。たとえそれがバッドエンドに繋がったとしても、言わないよりは気が晴れるかもしれない。そう、自分の部屋でぶちまけたあの時みたいに……。
覚悟を決め、顔を上げて梶本先輩としっかり目を合わせ、私が告げようとした言葉は――、
「そこまでだ!」
幸か不幸か、後ろから発せられた凛々しい声によって押しとどめられてしまった。
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