放課後の分かれ道

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「ちょっとレイネ、やめなよ!」 「何を言う。皆が思っている事を私の口から述べた迄だ」 「何だ、あたしが悪いって言いたいのかよ!」 レイネの指摘が事実なのか、先輩は全方向ににらみを利かせて部員達の反応を見回した。みんな巻き込まれないよう先輩と目線も合わせず、はっきりとした肯定や否定の言葉も出なかった。それが先輩には余計不満だったらしく、大きな舌打ちをしてからレイネに向き直った。 「どいつもこいつも……! 踊れてないのは事実だろ? だからあたしはその分練習しろっつってんの! それのどこが悪いんだよ!?」 この言葉もレイネに放ってはいるが、みんなに対してもぶつけているのだろう。私の周りだけで留まっていた負の感情が堰を切ったように全体へと流れ出し、場の空気が濁っていくのを感じた。 どうにかして2人の争いを鎮めたい所だけれど、何事も一旦出来てしまった流れを変えるのは難しく、 「開き直りは見苦しいぞ。(ろく)に指導も出来ぬ癖に荒ぶる先輩風ばかり吹かせおって。北風も呆れて見ておるわ」 「おお! レイネちゃん、結構言うねえ!」 レイネの口からは意図的なのか天然なのか、キザで挑発的なセリフが次々と湧き出て、それを遠山先輩が面白がって持ち上げるものだから、梶本先輩の怒りの炎は燃え盛るばかりだ。 「あんた、1年の癖に生意気なんだよ!」 「その方が年長者を気取るなら己を律し、下の者の模範となるべきだ。なのにまるでそれが出来ておらぬ。特に先程の遅参はいただけぬ。まずはその段、皆に詫びるのが筋であろう」
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