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こうして事態は収束に向かい、やっと彼女に校舎を案内出来るはずだった。
なのに、
「だが、その方の言い分にも聞くべき所はある。私も赤子では無い故、校舎見学に人の手を煩わせるまでも無い。一人で巡る事としよう」
「あぁん……!?」
「レイネ……?」
急に彼女が「1人で行く」と言い出した。これじゃ何の為に揉めたのかわからない。
「その方に一言申しておく。もし詩乃が理不尽な仕打ちを受けるような事有らば、この私が許さぬ。それだけは努々忘れぬ事だな」
「誰がそんな事……!」
彼女は先輩を鋭く指差して、大きなクギを刺した。私の身を案じてくれているつもりなのかもしれないけれど、これ以上先輩を刺激して欲しくは無かったので、聞いているこっちは心臓が止まりそうだった。
「詩乃よ。残念だが、我らの歩む道は分かれた。そなたはここに残り、温習に励むが良い」
「ああ、ちょっとちょっと……!」
最後まで大げさなセリフを吐いて、彼女は堂々たる足運びでスタジオから退場していった。まるで、落雷に遭ったような衝撃で呆然と立ち尽くす私達を残して――。
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