初日の彼女は

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初日の彼女は

やっとここまで来る事が出来た。彼女の学生生活のスタートが切られたに過ぎない1限目の最中に、私はしみじみとこれまでの事を思い返していた。彼女と出会ってまだ10日くらいしか経っていなかったが、その間に何度か危機一髪の出来事に遭遇したせいか、ずいぶんと長く感じられた。 あなたに説明する程の事でもなかったとは思うけれど、私は一人、この不思議な同居人との出会いを振り返っていた。 私、早川詩乃は1月前にこの高校への入学を果たし、勉強や部活に友達作りと、忙しい毎日を送っていた。中でも、高校から新しく始めた演劇部の活動では、ミュージカルの為のダンスで毎日しごかれ悪戦苦闘していた。 そんな私の所に突然レイネがやってきたのは、4月が終わる頃の放課後の事だった。私が家でのダンスの自主練習に疲れて寝ていた所に彼女が窓から入ってきて、いきなり私のおヘソを奪い取ろうとしたものだから、部屋の中で激しいバトルを繰り広げた。 色々あって休戦したのもつかの間、その日、街は激しい雷雨に見舞われていて、そのまま行くと大規模な落雷と洪水の被害が出てしまう所を、彼女と協力して間一髪食い止めた。 雷雨が収まってめでたしめでたしかと思ったら、彼女から「そなたの家に住まわせて欲しい」と頼みこまれた。何でも、カミナリ様が住む天界と私達が住んでいる地上は密接に繋がっていて、彼女はうちにホームステイ(カミナリ様の世界では『雨宿り』というみたい)をして下界の事を学びたいという事なので、迷いに迷った末に引き受ける事にした。 どこにでもいる普通の高校生の私が、雲の上の神様に選ばれたのには理由がある。 一つは、私が彼女と同じ年頃の女の子で、そばにいて下界の生活を色々教える為の案内役にふさわしい存在だという事。彼女が今こうして学校で机を並べて授業を受けているのも、下界の教育がどうなっているのかを肌で感じたいからなんだって。
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