夕暮れの帰り道

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「それじゃ、残ったみんなで歌の練習しましょう。パート毎に並んで!」 「はい!」 米満先輩は手際良くみんなを整列させ、すぐにコンポを操作して曲をかけた。流れてきたのは、さっき見学者の前でダンスを披露した時の曲だ。 この曲は単なるBGMでは無く、ちゃんとした歌詞が付いている。劇中に登場するアイドルの代表曲であり、私達1年女子がアイドル役として歌って踊る事になっていた。これまでダンスの事ばかり気にしていたが、歌の練習も頑張らなくてはいけない。 練習はメインパートの私達が先導し、他のパートがコーラスや掛け声を入れるという全体の流れを確認する形で行われた。 レイネも「励め」と言ってくれた事だし、「どうせやるなら少しでも中味の濃い練習を」と、シュールな歌詞も恥ずかしがらず大きな声で歌った。 それでも、いま一つ没頭する事が出来なかった。 なぜなら、歌っている途中で上の階から男女の怒鳴り声が代わる代わる聞こえてきたからだ。女子の方はもちろん梶本先輩で、男子の方は遠山先輩だ。彼が声を荒げているのは見た事が無い。みんなの視線は自然とまた天井に引き寄せられていった。 「ほらほら、集中しなきゃダメじゃん。歌ってやな事忘れよ?」 「は、はい……」 みんなの集中しきれていない姿に、米満先輩が優しくダメ出しした。だけど、どこかズレている。先輩はあれだけの大声が気にならないのだろうか。それに、失恋カラオケじゃないんだから……。 最初から最後まで2回ほど通しで歌うと、それぞれのTシャツにじわっと汗がにじんできたので、水分補給タイムとなった。
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