夕暮れの帰り道

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私はハンドタオルで顔と首筋の汗をぬぐい、500mlのペットボトルに入ったスポーツドリンクを一気に半分くらい飲み干した。疲れた時に飲むスポーツドリンクは格別で、喉を通った瞬間にビタミンやミネラルが吸収されていくような感覚があるので好きだ。 身体の内側をうるおしたら、「今度は外側を」と、窓側に移動して冷たい風に当たる事にした。夕方5時にもなると暑かった昼間の気温も下がり、身体を冷やし過ぎないくらいに冷まされた空気が風に乗って伝わってくる。 窓に肘をついて外を眺めると、外の樹木の青々と茂った若葉が目に飛び込んだ。この時期の葉っぱは独特の青臭さがあるが、生命力がみなぎっているようで割と嫌いじゃなかった。 下に目を移すと、運動部が校舎の周りをランニングしていた。今にも立ち止まりそうなくらいバテバテの人を見ると、どこの部も大変なんだなと思った。 「早川さん、お疲れ。いい声出てたね」 「ほんと? ありがとう」 森田さんに褒められ、辛い中にも一筋の希望を見出せた気がした。この後、もう1回全パートを通しで歌って終了との事なので、次はもっと上手く歌って締めよう。 みんなが最後の練習に向けて1ヶ所に集まりだした頃、スタジオの電話が鳴った。一番近くにいた先輩が受話器を取り相手を確認すると、 「おーい、早川さーん! 保健室から電話ー!」 「あ、はーい!」 保健室から私宛にかかってきたので、悪い知らせで無い事を祈りつつ受話器を受け取った。
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