夕暮れの帰り道

5/17
前へ
/356ページ
次へ
「お電話替わりました、1年A組の早川です。はい、はい……。えっ! そうなんですか!? わかりました、後で行きます! はい……」 保健の先生から告げられたのは、とても良くない知らせだった。受話器を取ってから置くまでの数十秒間に、どれだけ血の気が引いたかわからない。 「米満先輩、すいません……。レイネが校舎見学の途中で気分が悪くなって、保健室に運び込まれちゃったみたいなんです。後で迎えに来てって言われたんですけど……」 「えー、大変じゃない! すぐに行った方がいいよ。もう制服に着替えて帰る準備して! 保健室行ったら、そのまま帰っていいから。部長には私から伝えておくよ」 「すいません、ありがとうございます!」 上の階で話し合いをしている部長達は、未だ誰一人戻ってこない。今は報告しに行く時間さえも惜しいので、米満先輩が身近にいてくれて本当に良かった。ありがたいお言葉に甘えて足早にスタジオを後にすると、更衣室で手早く着替えを済ませ、一目散に洋館の外へと飛び出した。 外でランニング中の生徒を猛ダッシュで抜き去る間に考えた、どうして彼女が倒れてしまったのを。そして、それは容易に想像がついた。 彼女達カミナリ様は、人間のおヘソからエネルギーを吸収しないと地上では生きていけない。今朝も一日分のエネルギーを補給していたはずだけれど、たぶん以前駅前でトラブルに巻き込まれた時みたいに、途中で使い果たしてしまったのではないか。 そういえば、今日は少し暑かった。授業は人一倍真面目に参加していたし、昼休みは千佳ちゃん達のケンカをほぼ一人で収め、さっきはあの梶本先輩にも毅然とモノ申していた。学校生活において、そう珍しくないこれらの出来事も、今となってはそのどれもが消耗の要因に思えてくる。
/356ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加