夕暮れの帰り道

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こんな事ならスタジオに残らず、一緒に校舎を周るべきだった。今更言っても仕方が無い事なのに、とても間違った選択をしてしまった気がして、後悔の念が入道雲のように湧き上がった。 私は、昇降口で脱いだローファーを下駄箱に入れる事無く、彼女の元を目指した。 保健室は本校舎1階の端の少し遠い場所にあり、今日はそこまでの距離がイヤに長く感じる。廊下を走るのは厳禁だが、奥に誰も歩いていないのを幸いに可能な限り急いだ。角を曲がり、頭上に保健室の札が見えてきた所で減速し、扉の前で滑るようにして止まった。 扉を開ける前に、もう一度汗をハンドタオルで拭い、乱れた息を整えた。何も救急車で病院に運ばれた訳じゃない。心配だからと言って慌てた姿を見せたら、逆にみっともない。 「失礼します!」 落ち着き払った佇まいを作り、ノックをして入ると、室内には消毒液の清潔感あるにおいが漂っていて、夕日が射し込む窓辺では、小野寺先生が鉢植えのアロエに水をあげていた。 「すいません、1年A組の早川です。天宮レイネを迎えに来ました」 「いらっしゃい。あら、上履きはどうしたの?」 「あ……」 私ったら、本当にうっかりだ。上履きを忘れたままカッコつけたってキマる訳無いのに。恥ずかしさに肩を落として呆然と立ち尽くす私に、先生は笑ってスリッパを貸してくれた。 「天宮さんならベッドで横になってるけど、心配ないよ。一時的に軽い貧血を起こしたみたいだね」
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