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おヘソが出ている子を見つけてこっそり回復していたとは、案外ちゃっかりしている所があるなあ。
「だが、そこで得られた活力も所詮は微々たる物、一時しのぎにしかならなかった。次に行った古典研究部で百人一首に興じていたら、眩暈がしてここに連れて来られたという訳だ」
「大変だったんだね」
さすがに、遠くから吸い取るだけではエネルギーを充分に補う事が出来なかったみたいだ。一見するとセコい行動も、彼女にとってはサバイバル感覚だったのかもしれない。
「さて、ここで寝たままという訳にも行かぬな。疲れている所済まぬが、活力を分けてくれぬか?」
「わかったよ」
ついたてがあるとはいえ、おなかを丸出しにしている所を先生に見られたら怪しまれるので、シャツの上から手を当てて吸い取ってもらう事にした。彼女曰く、本当は直接おヘソに触れた方が速く吸収出来るのだけれど、家に帰る迄のわずかな分なので、着たままで事足りるそうだ。
おなかに当たる彼女の手が、ぼんやりと光る。5月の太陽は沈むのが遅く、まだ明るい室内ではそれ程目立たなかった。
1分少々で補給が完了すると、眠たげだった彼女の目は、ぱっちりと開かれた。
「爽快だ、もう何の不安も無い。たとえあの赤毛のじゃじゃ馬が襲って来ようとも、返り討ちにしてくれるわ、はははっ!」
「わかったから落ち着きなよ……」
エネルギーを吸い取って元気一杯の彼女は、吸い取られただるさでテンションの下がった私の事などお構いなしに上機嫌だ。
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