初日の彼女は

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もう一つは、カミナリ様にとって人間のおヘソが必要不可欠だという事。カミナリ様といえば、昔話なんかでおなかを出して寝ている子どものおヘソを取っちゃうイメージがあると思う。彼女も同様で、人間のおヘソからエネルギーを吸い取って自分のパワーに変える事が出来る。また、カミナリ様の身体は地上では体力の消耗が激しく、エネルギーが無くなると弱って死んでしまうとの事で、だから定期的にエネルギーを補給する為に、人間の協力を得て共同生活を送るのがベストなやり方だという。 何で私が、そんないけにえみたいな役に選ばれてしまったかというと、私の身体が頑丈でカミナリ様のエネルギーの吸収に耐えうるからなんだって。彼女曰く、「そなたのヘソは活力に満ち溢れ、形も縦長で美しく、実に素晴らしいヘソだ」と大絶賛だ。こんな褒められ方をされても、喜んでいいのかわからない。 彼女は1日1回私のおなかに手を当てて、その日活動するのに必要なエネルギーを吸い取る。最近では少しずつ慣れてはきたが、吸い取られた後はドッと疲れてだるみが出てしまう。吸い取られる時におヘソまで取られる事は無いものの、不安なのでたびたび「絶対に取らないで!」と、彼女に念を押している。 彼女の正体がカミナリ様だとバレると色々マズいので、人間に成りすまして生活をしている。元々、ツノが生えている事を除けば人間とほぼ変わらない姿をしていて、ツノも私の部屋以外では引っ込めている。金髪に青い目はちょっとだけ目立つけれど、それだって外見上はハーフっぽい女の子にしか見えない。 どちらかと言うとの方が問題ありで、『水戸黄門』みたいに古風な言葉遣いをするし、神様だからなのか偉そうな態度を取る事も多い。決してわがままな性格では無く、真面目で正義感の強い所もあるのだけれど、これでどれだけ私が苦労させられた事か……。 何とか学校では何のトラブルも起きないように過ごしたい、そう強く祈りながら私は意識を授業の方に戻した。
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