夕暮れの帰り道

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自転車を漕ぐ事約10分、私達は新駅の近くにあるファストフードのお店までやって来た。 この街の駅前通りは、JRの本駅と私鉄の新駅という近接する2つの駅の周辺に広がっている。 この2つの駅はかなり対照的な存在で、他県と繋がっていて新幹線も停まる一大ターミナルであるJRの本駅と比べ、私鉄の新駅は2両編成の小さな電車の始発駅で、終点も同じ市内までだ。 かといって私鉄がショボいという事では無く、10分間隔で発着し2~3分おきに次の駅に繋がるフットワークの軽さは、バスと並ぶ市民の足として重宝されている。新駅にしたって、人気のショップが入ったキレイな駅ビルと一体化した現代的な駅舎は、他所から観光に来た人に見られても決して恥ずかしくない物だ。こんな事、今更説明するまでもなかったかもしれないけれど。 今いるこのお店も駅近くの商業施設にあり、壁面から外に張り出したカウンターの前で注文するテイクアウトスタイルで、いつも4~5人くらいの行列を作る人気店だ。 「すいません、フライドポテトのレモンソルト味を1つ下さい」 「かしこまりました」 このお店はフライドポテトのメニューが充実しており、珍しいフレーバーのソースが揃っているが、今日はさっぱりしたい気分だった。値段は他のお店より若干高めだけれど、その分味がいいので、近頃私のお気に入りの店になっている。 「その芋は先程の礼に馳走してつかわそう」 レイネが小さながま口財布から500円玉を取り出して渡してきたが、受け取らなかった。
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