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両手を広げてわざとらしいため息をついた彼女にツッコみはしたけれど、もしかしたら本当にそれらの部での活動を楽しみにしていたのかと思うと、少しかわいそうな気もした。
「まあ、もう少し下界に適応出来れば、もっと自由に動ける様になるであろう。それまでの辛抱だ」
「そうだね、慣れたら掛け持ちしたっていいんだから、焦らずに行こうよ」
「うむ。ならば善は急げだ。早速家に帰り、踊りの温習に励むとしよう。詩乃、家路までの先導を頼むぞ」
「了解」
食べ終わった後のカップをゴミ箱に捨て、自転車を停めてあった場所に戻る頃には、空が鮮やかな夕焼けに染まっていた。
自転車を漕ぎ出し、家までの20分程の道のりの中で浮かんだのは、先輩達の顔だった。
彼女が入部したいと言ったら、何て言うだろうか。喜んでくれる人もいれば、怒り出す人もいるだろう。正直不安も大きいが、やる気に満ちあふれた彼女の前で顔を曇らせていてはいけない気がした。
やめた、考えすぎても仕方が無い。上手く行くかどうかなんて、その時になってみなければわからないし、今は車にぶつからないよう、ペダルを漕ぐ事に集中しよう。
こうして、彼女の演劇部入りが決定した。
この後、彼女が入った演劇部の活動は嵐の連続だったんだけれど、それはまた後で話させてね。
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