初夏の浜辺には

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このままだと彼女が納得しそうにないので、説得を試みる事にした。 「レイネ、浜歩き大会は大事な学校行事の一つなんだよ。ただ浜辺を散歩するだけじゃなくて、みんなとの親睦を深めるとか、他にも色々と意味があるんだよ」 「❝色々❞とは何だ?」 「えーとね……」 彼女に親睦以外の意味を聞かれて言葉に詰まった。私だって初めてだから、漠然としか把握していなかった。同じ学校に通うお兄ちゃんなら上手く説明出来るかもしれないが、今ここにはいない。 だったら、当てずっぽうでも私なりに考えた意味を話してみようか。 「海岸を歩いて足腰を強化するんだよ。レイネは雲の上にいたから地上を歩くの慣れてないでしょ? どう、鍛錬にピッタリじゃない?」 これは、我ながらベストアンサーだと思った。歩くとすぐ疲れてしまうのを克服する良い機会だと、彼女の心に刺さったのではないだろうか。 「それは一理有るが、他には無いのか?」 「他!? 他はですね……」 ところが、彼女は一つだけでは満足してくれず、すぐに他の意味を求められてしまい、私は思わず心の中で頭を抱えてしまった。「そんなの知ってる訳無いでしょ!」と言いたい所だけれど、まっすぐに私を見つめる青い瞳からは逃げられそうに無かった。 「ここで黙ってしまったらダメだ」と、黒髪を手櫛でとかしながら落ち着いて考え、私がひねり出した答えは――、
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