初夏の浜辺には

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「海岸を歩くだけでも色んな事がわかるよ。地上にどんな生き物がいるのかとかどんな地形なのかとか、そこに住んでいる人達の生活の様子とか。実際に見てみると役に立つんじゃないかな」 とりあえず答えを導き出す事は出来たものの、浜歩き大会の目的としてはだいぶ優先順位が低そうだし、小学生の社会科みたいな内容だった。もし彼女がこの幼稚な答えを鼻で笑ったなら、私もつられて苦笑いしていたに違いない。 「ほう、その考えには至らなかった。そも私は学校どころか下界自体に明るくない。なれば、この地の一角を成す海と浜辺を知るは重要だ。『百聞は一見に如かず』と言う訳か。流石は詩乃、目から鱗が落ちた思いだ!」 意外にも、彼女は私の即席な解答にいたく感銘を受けたようで、大きな目をより見開いて大いに納得の表情を浮かべていた。 「そ、そうなんだよ! 何だったらバスに乗るのだって交通手段を知る機会になるし、海の家でラーメン食べるのだってご当地の名物を知るのには欠かせないし、とにかく全てに意味があるんだよ」 おそらく、彼女は観光バスに乗った事も海の家に行った事も無いと思うけれど、その場の勢いでかなりオーバーな言い方をしてしまった。
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