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「そうか、『全てに意味がある』か。浜歩き大会とは、それ程迄に重要な課外学習なのだな。いや、恐れ入った!」
「そ、そうそう! 『家に帰るまでが浜歩き大会』って言うくらいだからね。みんな大事なの、うんうん!」
彼女の勢いに押されて強引にまとめてしまった、この時の自分を厳しく叱りたい。自分で言った事だけれど、言っている事がめちゃくちゃだ。
「おお、何と言う深遠にして価値有る催しであろうか! ならば早速準備に取り掛からねばならぬな」
「そんなに焦らなくても大丈夫だよ。着替えの服にお財布とバッグくらいしか要らないみたいだから、前の日の夜に用意すれば充分間に合うよ」
日帰りの行事なので準備はお手軽だ。あとは当日のお昼ご飯だが、これは朝お母さんに作ってもらうかコンビニでおにぎりを買うので、どちらにせよ前日までに準備する事はそれ程多く無かった。
「何を言うか、私は余りにも無知だ。浜も陸も乗り物も、何一つとして確かな知識を得ておらぬ。課外学習の効率化を図り、そこで得られる経験値を最大化する為には、出立の朝迄に情報を調べ上げておかねばなるまい」
「うん……?」
思えば、ここから段々と雲行きが怪しくなった。彼女は何やら難しい言葉を用いて、「事前に情報収集をしておきたい」と私に訴えた。
「幸いにも、そなたは下界の住人にして当地の住民でもある。そなたに聞けば大抵の事が解るであろう」
「うーん……。そういう風に言われちゃうと、そこまでの自信は無いかも……」
私だって県内の情報を熟知している訳じゃ無い。目的地の海岸は一部分しか行った事が無いし、彼女の期待に沿えるかは微妙だ。
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