初夏の浜辺には

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「『1305年に所領として安堵されて以来……、……神社は海の安全を祈願する目的で……』 嗚呼(ああ)、調べる時間が足りぬ! 詩乃、何故もっと早く教えてくれなんだ!?」 「えー……!?」 浜歩き大会まであと3日・2日とカウントダウンして行くにつれ、彼女は思うように知識が深まらない事に焦りを見せるようになった。悲鳴にも似た叫びとともに髪を乱暴にかき乱しては、恨めしそうに私を見つめた。 唯一くつろげる時間であるはずの晩御飯の時も、地理やバスについて私達家族を質問攻めにし、一通り聞き終わるとすぐに部屋に戻っていった。 「レイネちゃん、大丈夫かしらね?」 「初めて友達と行くイベントだから失敗しないようにって根掘り葉掘り聞いているのかなあ? 詩乃、ちゃんとフォローしてあげるんだよ」 「う、うん……」 何かに取り憑かれたような彼女の姿に、お父さんやお母さんも少し心配し始めた。 彼女が出て行ってからしばらくして部屋に戻ろうと階段を昇りかけた時、 「詩乃、ちょっといいか?」 「いいけど?」 お兄ちゃんに呼び止められた。こないだ新調したばかりの眼鏡のレンズが不気味に光り、心なしか不機嫌な気がした。 「彼女は大丈夫なのか? 最近部屋に籠りっきりだし、夜中にぶつぶつ何か喋ってる声が聞こえて来るんだが」
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