初夏の浜辺には

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「詩乃よ、有益な情報提供、感謝するぞ」 彼女は座った姿勢のまま、膝に手を置いて私に深々と丁寧なお辞儀をした。 ネットの情報を教える事が出来たのはお兄ちゃんのアドバイスによる所が大きいから、手柄を独り占めしたみたいで後ろめたさもあるが、ここは素直に受け取っておく事にした。 「どういたしまして。あんまり力を入れずにリラックスして行こうよ」 あとは、彼女がこれ以上根を詰めないようにゲームかダンスの練習に誘って気分転換させようか。 「さてと、良い情報が得られた所で資料の精読に戻るとするか」 「まだ読むの!? もうそんなカタい本、必要ないでしょ!」 ところが、私の計画とは裏腹に、彼女はまだまだ紙の本を読む気満々だ。 「それはそれ、これはこれだ。可能な限り文献は読ませて貰う」 「ご自由にどうぞ……。あまり無理しないようにね」 「ああ、心得ている」 とびきり頑固な彼女に、果たして私のした事に意味はあったのだろうか。 私はこれ以上の説得を諦め、2段ベッドの下段に潜り込んで、読みかけだった漫画を読む事にした。 たぶん彼女は大丈夫だろう。時折横目で彼女の様子をチラチラと確認したが、リフレッシュ出来たのか背筋はまっすぐに伸び、ページをめくる音も一定間隔でリズミカルに刻まれていて、鼻歌まで聞こえてくる程のご機嫌ぶりだ。 結局、彼女は前の日の夜中まで入念過ぎる下調べを続け、机に突っ伏した姿で当日の朝を迎えたのだった。
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