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「パレオに隠したおヘソの威力、気が付くのは何時なのか――♪」 ただ、この歌詞の部分だけは、静かに聴いていたレイネの肩が一瞬ピクッと揺れていた気がする。 「『refrain(リフレイン)に包まれてるよ――♪』……みんな、ありがとーう!!」 千佳ちゃんが唄い終わりの挨拶までアイドルらしく決めると、みんなは大きな拍手と勢いのある指笛でパフォーマンスを称えた。 「観た? これが本当のアーティストってやつですよ、詩乃ちゃん」 「まあ、上手だったけど……」 それを受けた彼女は大満足のご様子で、私の方に振り返り自慢げに語る。そんなドヤ顔されてもなあ……、でもこういうパワーは尊敬する。 「はい、次ー! じゃあ、杉山っち!」 「この直後に俺!? うわあ、やりづれぇ……。アニソンに逃げようかな……」 これだけ盛り上がった後に唄うのは、確かに嫌だな。無理矢理マイクとリモコンを渡された杉山君は、将棋の棋士のように頭をかきながら選曲の長考に入った。 「ヤバい、カラオケ一旦ストップ――!! 窓開けて!!」 突然、バスの前方座席から緊急のコールが入った。有働君が両手でバッテン印を作ってカラオケを中断するよう指示を出したのだ。
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