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「先生はあの調子で浜歩きを乗り切れるのだろうか」
レイネが先生の丸まった背中を見ながら、その身を案じる。
「たぶん大丈夫なんじゃないかなあ。そういえば、レイネは大丈夫なの?」
「ああ、今の所頗る爽快だ」
さっきも言った通り、彼女は人間界の乗り物が苦手で酔いやすい体質だ。この前、家族全員で車に乗って買い物に出掛けた時も、平坦な一般道をごく標準的な速度で進んでいただけなのに、てきめんに酔ってしまってみんなを慌てさせた。だから、本当は他人の心配をしている余裕なんて無いはずだ。
でも、今日ここまでで彼女に車酔いの症状は見られない。顔色も良く、表情は太陽の女神のような晴れやかさだ。
それは、家を出る前にとある対策を講じていたから。
「やはり、これの効果は絶大だな」
彼女はそう言って左手を自分のおなかにあてた。
本日の装いは、白地に細いストライプの入った七分袖ブラウスに、足首まであるカーキ色のパンツのコーデだったが、実はこのトップスの下に秘密が隠されていた。
なんと、彼女はおヘソに梅干しを貼り付けていたのだ。
「それ、本当に効くの? 未だに信じられないよ」
彼女曰く、乗り物酔いしやすい人がおヘソに梅干しを貼ると酔わなくなるらしい。
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